第4章 玉蜻
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「出陣させてほしい」
そう言って、頼んできたのは安定と同田貫だった。
「理由を聞いても?」
尋ねれば、彼らは強い視線で訴えかけるように言った。
「刀が腐る」
「戦場に出たい」
「俺たちは、戦うためにここにいる」
彼らの言い分は最もである。それに、申し出はありがたい。少しばかり悩んだ末、歌仙と三日月に事情を話すことにした。
「……というわけなんだが」
大広間。机を挟んで事情を話せば、三日月は湯呑から口を離し考える素振りを見せた。
「ふむ、大和守と同田貫が」
「言いそうな二人ではあるけどね」
歌仙とは連絡事項を含め話すことはあれど、実のところ三日月と言葉を交わすことはあまりない。こうして口を開けば、答えてはくれるが距離は一向に縮まらず、瞳の奥に見え隠れする憎悪や敵意は確かに存在していた。
「二人の言い分も、分からんでもない」
「なら、出陣を許可しても?」
「構わんだろう。ただし、指揮はこちらでとる。いいな?」
「それで納得するならいいよ。刃選は?」
「なら、それは僕が引き受けよう。薬研に小夜、練度の高い石切丸と……」
「鶴丸なんかはどうだ?」
すらすらと歌仙が名を挙げる。さすがは初期刀といったところか。最後の一振りは、三日月の口から提案された。その名前に眉間に力が入る。
「鶴丸か…」
「何か不満が?」
思わず呟けば、三日月がすかさず尋ねた。