第4章 玉蜻
「前のある……、審神者はどうだったの?」
ふいに、大和守が尋ねた。彼の言う前の審神者とは一代目のことだろう。
「きみは、知らなかったか」
「ここにいる刀の半分以上はそうじゃない?」
「そうだね、そうだった…」
青江はいつになく沈んだ表情で、けれど笑みは絶やさずに言葉を紡いだ。
「彼も、悪いばかりではなかった」
思いを馳せるように、遠くを見つめ続ける。
「ああ、そうだね。食事や湯浴みを好んでいたところは、きみと同じかな」
不意に視線を感じ、言われているのが自分であると気づく。その一言を発するのに、どれだけの時間を要したのだろうか。ほんの僅か、目に見えない程小さな変化かもしれない。
けれど、懐かしむ視線が。思い出へと馳せる思いが。
ただ、憎しみばかりじゃないことに気づいてしまっては、なんとも言えない気持ちになった。