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夜明け

第4章 玉蜻



 覚悟はしていたが、それはもう酷いものだった。

 まず匂い。水が腐ったような独特な匂いは、換気がされていないせいで大浴場に籠り、最悪といっても過言ではない。すぐさまマスクをつけ、上からタオルもまいた。
 次に床のぬめり、及びカビ。詳細は割愛するが、もう、もう酷いのなんの。
 更に俺の肝を抜いたのが、

「なんっで血痕があんの?」

 へばりつき、乾いた血痕の数々だった。

「これは、刀剣男士のものだね」
「刀剣男士の…?」
「あそこ、よく見てごらん」

 石切丸の目線の先、指さされた場所をよく見ると、血痕からは瘴気が立ち上っていた。

「あれ、瘴気だよな…」
「そう。おそらく、短刀のものだろうね。彼らは、日常的に酷い扱いを受けたいたから」
「待ってくれ。幾つか気になるんだが、」

 さら、と事実を言ってのけた石切丸を止め、頭痛のする頭を押さえる。

「まず、そのひどい扱いを受けたっていうのは、一代目からか?それとも二代目?」
「どちらもさ」

 答えたのは、青江だった。

「最も、ここに残っている血痕は二代目に傷つけられた短刀のものだろうけどね」
「言い切れる根拠は?」
「二代目は一度この本丸を立て直している。今の君のように、清掃を行い、浄化作業を行った。だから、必然的に二代目以降としかならない」
「なるほど。分かった」

 こうして、尋ねれば答えてくれるようになったのは大きな進歩だ。最も、限られた刀剣ではあるが。

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