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夜明け

第4章 玉蜻


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 畑が軌道に乗り出すと、次はいよいよ風呂掃除である。すっかり畑仕事の常連になった大和守や同田貫に声をかけると、渋々手伝ってくれることになった。

「今まで風呂は?」
「ここ最近はずっと入ってないよ。井戸で水浴みをしていたくらいかな」
「おー…、そっか」

 確かに神様ともなれば、人間の体とは構造が違う。姿形は同じでも、中身は全く別物である。だから、風呂に入らなくても何も問題はない。あくまでその姿は、器であるからだ。
 だが。

「風呂は入ろう」
「面倒くせぇ」
「同田貫は入るとはまると思うけどなぁ」
「僕は?」
「大和守もはまると思うよ。なんせ、風呂は命の洗濯って言われてるからな」
「「命の洗濯」」

 目をぱちくりさせる二人に頷けば、タイミングよく鶯丸が入ってきた。

「頼まれていたものだ」
「ありがとう、助かるよ」

 鶯丸はバケツを掲げ、それを俺に手渡した。中にはスポンジや洗剤が入っている。必要なデッキブラシは歌仙が探してくれているところだ。

「鶯丸さん、今日は手伝ってくれるの?」

 大和守が尋ねると、鶯丸は少し悩んだ素振りを見せた後、俺の方をじっと見つめた。

「な、何だよ」

 探られているような、定められているかのような視線に居心地の悪さを感じて後ずさる。

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