第4章 玉蜻
「まさか、」
ゆっくりと、燭台切が口を開く。低く響く声は、凄みがあった。
「きみも食べるつもりかい?」
睨まれて、いや、いやいやいやと首を振る。
「食べない。食べないって。これは君たちにって思って持ってきたんだ」
「食べないのかい?」
かと思えば、今度は歌仙が少しばかり拗ねたように尋ねてきた。いや、どうすれば。
「審神者さーん、歌仙なんて?」
困っていれば、大和守が畑の方から追加の野菜をもって現れた。ナイスタイミング。
「ん?どうしたの?」
どうやらただごとではない雰囲気を感じ取ったのか、大和守がこてんと首をかしげる。大きい瞳がぱちくりと瞬いて、あどけなさを助長した。
「はー、いや、なんでもない」
諦めたようにため息を吐いたのは、歌仙である。燭台切はというと、最後にもう一度俺を睨んでからその場を立ち去った。
「こっわぁ…、ありゃあキレてるね。審神者さん何かした?」
「何もしてねーよ…」
つい、最近接している刀剣男士たちが普通に会話をしてくれていたから、忘れそうになっていた。そういえば、刀剣男士たちの反応はこうだったな。
「それで、ご飯だったね」
歌仙が近づき、かごに入った野菜を見ながら言う。
「うん、たくさん収穫できたんだ。最近、ちゃんとしたご飯食べてないし、作ってほしいなって」
「そうだね。せっかくだから、ほかの刀剣にも声をかけようか」
「あ、それなら僕に任せてよ!」
「じゃあ頼んだよ」