• テキストサイズ

夜明け

第4章 玉蜻



「まさか、」

 ゆっくりと、燭台切が口を開く。低く響く声は、凄みがあった。

「きみも食べるつもりかい?」

 睨まれて、いや、いやいやいやと首を振る。

「食べない。食べないって。これは君たちにって思って持ってきたんだ」
「食べないのかい?」

 かと思えば、今度は歌仙が少しばかり拗ねたように尋ねてきた。いや、どうすれば。

「審神者さーん、歌仙なんて?」

 困っていれば、大和守が畑の方から追加の野菜をもって現れた。ナイスタイミング。

「ん?どうしたの?」

 どうやらただごとではない雰囲気を感じ取ったのか、大和守がこてんと首をかしげる。大きい瞳がぱちくりと瞬いて、あどけなさを助長した。

「はー、いや、なんでもない」

 諦めたようにため息を吐いたのは、歌仙である。燭台切はというと、最後にもう一度俺を睨んでからその場を立ち去った。

「こっわぁ…、ありゃあキレてるね。審神者さん何かした?」
「何もしてねーよ…」

 つい、最近接している刀剣男士たちが普通に会話をしてくれていたから、忘れそうになっていた。そういえば、刀剣男士たちの反応はこうだったな。

「それで、ご飯だったね」

 歌仙が近づき、かごに入った野菜を見ながら言う。

「うん、たくさん収穫できたんだ。最近、ちゃんとしたご飯食べてないし、作ってほしいなって」
「そうだね。せっかくだから、ほかの刀剣にも声をかけようか」
「あ、それなら僕に任せてよ!」
「じゃあ頼んだよ」

/ 142ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp