第1章 暁闇
「こちらが離れでございます」
あれから数分して着いた離れは、存外綺麗であった。
「思っていたより、綺麗だな」
思わずこぼせば、こんのすけが頷く。
「えぇ。以前は目も当てられない惨状でしたが、審神者さまの前任者が離れはせめてと。離れのそばにある井戸も綺麗にして下さっています」
「そうか、それはありがたい。その前任者は?」
「本丸を所謂ブラック本丸に仕立てあげた者とは別の者です。政府のもので、審神者の能力はなしと判定を受けていた者でした。刀剣男士に傷を負わされ、政府に保護を求められました」
「…保護ねぇ……」
政府のものは内情を詳しく知らないらしく、とにかくかなりまずいことになっているということしか聞けなかった。「詳しくはこんのすけが知ってるんで!」という言葉は少なくとも嘘ではないと信じたい。