第3章 八雲
「殺す殺す殺す。にくい、人げんが、憎い」
呪詛のように、小さな体は全部を使って吐き続ける。突然、頭に映像が流れ込んできた。それは抱きしめた小さな体ーー小夜左文字から流れてきた今までの記録であった。
くそ、リンクしてる。
意図せず記憶、ないし小夜左文字の記録を共有してしまったのは痛みで朦朧としている故だった。
ーーー死ね
ーーーやめて!
ーーー兄さまっ、
ーーーお前なんか…!
ーーー主
ーーー嬉しいよ、小夜
ーーー消えてくれ
ーーーあぁああああぁあ…!!
砂嵐の中、時々映る映像。どれも血に塗れた記録だ。自分も、大切なものも、ぜんぶ壊されていく。繰り返し、繰り返し、場面は切り替わっても、行われている行為に差異はなかった。
何故。どうして。小さな体から聞こえる弾糾。絶望と、喪失感と、憎しみを全部混ぜてぐちゃぐちゃにすり潰した。
記憶に引っ張られ叫び出しそうな絶望を押し込め、俺は小さな体を再び強く抱きしめる。ふーっふーっ、とまるで手負の獣だ。大きな衝動や痛みを呑み込んで、故に声はひしゃげた。