第3章 八雲
「ぐぅ…っ、」
咄嗟に庇ったが刀は肩に刺さっていた。熱さと痛さにうめく。頭の中に響く声を無視して、それでも必死で小さな体を手繰り寄せ抱きしめた。
月の見えないこの本丸では、夜は文字通り真っ暗になる。暗闇の中、姿形を認識することは難しい。それでも、目が慣れてくれば少しずつその輪郭を確認できる。
細い手足。血のついた髪。漏れる息づかい。
抱きしめて尚、小さな体は暴れて抵抗した。それでも何とか抱きしめながら、動きを抑える。
「…ッ!!、ふっ…、!」
痛みは鋭く体を突き刺すが、今ばかりは構っていられなかった。どうせ簡単に死ぬ身ではない。
「殺す、殺す殺す」
小さな体は、小さな声で不穏な言葉を続けてこぼす。まるで呪いだ。とても正気の状態ではなかった。
「審神者さま!」
隣で眠っていたこんのすけが目を覚ましたようで、叫び声を上げる。その声や、抱きしめている体の動きが傷口に響く。痛い。嚙み締めた歯の隙間から、荒い息が零れる。患部は燃えるようだ。