第2章 幽冥
『干渉しすぎるな』
頭に響く声。釘をさすような声色に、ふてくされたように返した。
「どうして」
『忘れたわけではあるまい。お前はいずれここを離れる』
「分かってる」
ここへ呼ばれたのは主としてではない。政府に頼まれ、この本丸を建て直すためだ。家のこともある。建て直しが終われば、ここを離れる身だ。
ぐだぐだ言っていても仕方ない。
気持ちを切り替え雑巾を洗う。許可はもらったので、仕上げとばかりに隅々まで掃除を進めていく。最後に浄化作業を行なって終わりだ。
調理器具や調味料などといった道具が揃っていることからも、料理好きな刀剣男士が元審神者がいたことが窺える。
食を楽しむことがあったのか、と少しばかり心がほっとした。