第2章 幽冥
そうして掃除に夢中になっていれば、歌仙がやってきた。宣言通り、鶯丸が呼んでくれたらしい。
歌仙は俺と掃除道具を交互に見た後、顔を顰めて尋ねた。
「何してるんだい?」
「掃除。あれ?鶯丸から聞いてない?」
「いや、彼からはここに向かうようにしか…。はぁ、まあいい」
この「まあいい」というのは、鶯丸に対してだろう。まさか俺も何の説明もされていないとは思わなかった。
「触らないほうがいいものがあるなら聞いておきたくて」
手を動かしながら尋ねる。
「一応、しまってあるものは触ってない。見える部分をざっと拭いただけだから、まだところどころ穢れも残ってるけど…」
軽く説明すれば、歌仙は少しばかり考えた素振りをした後で素っ気なく呟いた。
「…放っておいてくれて、構わない」
そうくるか。俺は被せ気味に返した。
「いや、放ってはおけないだろ。刀剣男士はご飯食べるの?」
「まぁ、娯楽として…」
「なら、食べた方がいい。食っていうのは、体だけじゃなくて、心のエネルギーにもなるんだ」
「……心の、」
「無理ごいするつもりはないよ。でもまぁ、掃除しておいて損はないだろ?」
「はぁ、好きにしてくれ…」
言っても無駄だと思ったのか、歌仙はため息を吐いてこの場を去ろうとする。俺は思わず歌仙の腕を掴んだ。