第7章 晨星落落
鉛のような体を鶯丸に預けたまま、目だけで歌仙を探す。鶯丸の後ろに立つ歌仙を見つけると、掠れる声で彼の名を呼んだ。
「かせん、」
呼べば、歌仙は膝をつき俺のすぐ傍へ寄った。
「何だい」
「これを」
胸元から取り出した鈴を、歌仙の掌へ乗せる。それを見つめて、歌仙の瞳が揺れる。
この鈴は、歌仙の主が身につけていたものだった。
金色の鈴。そして、鈴についた紐は藤と桜、白、三色の糸が美しく編み込まれている。
歌仙の顔が溜まらず歪む。じわりと水の膜が彼の美しい瞳を覆いつくした。
「……ずっと、持っていたのかい?」
掠れた声で、歌仙が尋ねる。頷いて、今度は俺が歌仙に尋ねる番だった。
「姿をもった呪いが、俺の部屋の前に落としていた。その日から、呪いは返せとないていた」
あの日見た夢のことを覚えている。鈴を見たときの歌仙の呟きはずっと耳の奥に木霊していた。
「歌仙、この鈴は、」
一度せき込む。
「君が、かつての主へ送ったものだな?」
確信をもって聞けば、歌仙は小さく頷き、一粒の涙を落した。そして、ゆっくりと口を開く。