• テキストサイズ

夜明け

第7章 晨星落落


 
 鉛のような体を鶯丸に預けたまま、目だけで歌仙を探す。鶯丸の後ろに立つ歌仙を見つけると、掠れる声で彼の名を呼んだ。

「かせん、」

 呼べば、歌仙は膝をつき俺のすぐ傍へ寄った。

「何だい」
「これを」

 胸元から取り出した鈴を、歌仙の掌へ乗せる。それを見つめて、歌仙の瞳が揺れる。

 この鈴は、歌仙の主が身につけていたものだった。

 金色の鈴。そして、鈴についた紐は藤と桜、白、三色の糸が美しく編み込まれている。
 歌仙の顔が溜まらず歪む。じわりと水の膜が彼の美しい瞳を覆いつくした。

「……ずっと、持っていたのかい?」

 掠れた声で、歌仙が尋ねる。頷いて、今度は俺が歌仙に尋ねる番だった。

「姿をもった呪いが、俺の部屋の前に落としていた。その日から、呪いは返せとないていた」

 あの日見た夢のことを覚えている。鈴を見たときの歌仙の呟きはずっと耳の奥に木霊していた。

「歌仙、この鈴は、」

 一度せき込む。

「君が、かつての主へ送ったものだな?」

 確信をもって聞けば、歌仙は小さく頷き、一粒の涙を落した。そして、ゆっくりと口を開く。

/ 142ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp