第7章 晨星落落
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『起きろ』
その言葉と、体に走った電気を思わせる信号にびくんと体が跳ねて、意識が浮上した。
「ここ…、」
『吾の精神世界だ』
言われてみれば、辺りは何もなく星空だけがどこまでも広がっていた。この空の色は俺の瞳の色だ。それをひどく気に入っているのだと、目の前の神様は俺が幼いころよく口にしていた。
「おれ、は、しんだのか…?」
記憶が前後している。パニックに陥ったせいか目を閉じれば映る景色はやはり炎ばかりだった。
痛む頭を押さえ、呟いた俺を目の前の神は鼻で笑った。
『吾がいながらそんな簡単に死ねると思うたか』
「そりゃあ…、無理か」
人の理から外れるというのは、そういうことだ。正しく死ねない。時の流れが変わる。普段生活していると感じることのないそれらは、こうしてふとした瞬間にやってくる。
『気を失ったお前を、あの鶯丸とやらが助けた』
「気を失う前後の記憶が曖昧なんだが…」
『……はぁ。あの呪いだ。どうやって炎を着けたかまでは分からんがな』
「やっぱりか。なら、今はかなりまずい状況ということになるな」
『始末するならとっととすべきだ。もたもたしていると呪いはさらに力をつけるぞ』
「あぁ。分かっている。……戻してくれ」
やつは俺をじっとりと疑うような視線で見つめたあと、またしても大きなため息を吐いた。そして、強い力で引っ張られる感覚がした。