第7章 晨星落落
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本丸は火の海だった。あちこちに引火し、息をするのもきつい。空気を吸えば、肺まで燃えるようだった。
視界はどこもかしこも赤く、皮膚がただれるような熱さは俺から冷静な判断を奪っていく。
この光景を見るのは、二度目だ。一度目は幼いころに。あのときは、自分の体の上に燃えた柱が落ちてきて身動きが取れなかった。今は違う。幸い、建築を支える柱は燃え切っていないらしく、建物自体は崩れていない。だがそれも時間の問題だ。早く外へ出なければならない。分かっている。
分かっているのに、過去の記憶が俺を縛り付ける。
体を思うように動かすことができない。息がうまくできない。熱い。熱くて、痛くて、なのにどうすることもできない。視覚も、聴覚も、嗅覚でさえも、炎に支配されている。
ぐらり、と何かに意識が引っ張られる。何も分からないまま、恐怖に固まった思考と体は、どこかへ沈んだ。