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夜明け

第1章 暁闇



「準備は整ったようだね。…説明するよ。

 まず、互いにこの墨の中に血液を垂らしてくれ。垂らす量は多くなくていい。量に差が出てはいけないから、二滴ずつにしようか。血を垂らした墨で、先ほどたがいに出した条件を和紙に写す。
 改めて内容の確認を。そちらは魂への干渉、そして身体への物理的な攻撃を。こちらは、君が主とならないこと。そして、刀剣男士へ命ずることの禁止を。

 これで間違いはないかい?」

「ないな」
「和紙に写されたことを互いに破れば、それ相応の罰が降る。約束は違えぬように」
「あぁ」
「勿論だ」
「効力は永遠ではない。しかし期間は伏せさせてもらうよ。どうなれば失われるかもね」

 それでは。

 歌仙兼定の合図で、針を人差し指の先にさす。ぷつ、と皮膚を裂く音が聞こえて、丸く赤い雫が膨れ上がった。

 そのまま雫を二滴。墨の中に落とした。俺の前に座る鶯丸は、刀を取り出し器用に指先だけを浅く切った。じわりと血が滲んで、俺の血と同じように墨に落ちる。二人分の血は、すぐに黒に飲まれ一見なにも分からない。

 歌仙兼定が、しっかりと確認した上で、それらを専用の筆で混ぜる。そして、これまた専用の和紙に流れるような字で写していった。

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