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夜明け

第6章 贖罪



 昔は、

 そうやって、つい、想いを馳せてしまう。

「昔…、以前は、この本丸も他所と変わらなかった」

 歌仙は瞳をとじ、瞼に映る情景を思い返していた。
 耳の奥で聞こえるのは、様々な刀剣の和気あいあいとした声だ。

「明るくて、笑い声が聞こえる本丸だった」

 男は子供が好きで、だからか子どもの姿をした短刀とよくじゃれついていた。いつも、刀剣男士のことを考えてくれていた。

「優しくて不器用な主。それを支える僕と君」

 初期刀の歌仙と、初鍛刀の今剣は、刀剣男士の中でも過ごす時間は長く、関わることも多かった。何かあれば真っ先に頼ってくれた。泣きつかれたこともあったっけ。

「ガサツなあの人だったけど、確かに僕らは大切にされていた」

 歌仙の理想とする雅な主とは、かけ離れていた。それでも、悪くないと思うくらいには、男を想っていた。

 なのに。

「彼は、おかしくなってしまった」

 歌仙たちを糾弾する声だけが、ずっと耳の奥にこべりついている。優しい声も、笑い声も、拗ねた声も思い出せないのに。

「でも、彼一人のせいではない」

 歌仙は、もう一度自らの罪を思い返す。

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