第6章 贖罪
歌仙に罪があるとすれば、それはきっと。
大切なときに手を抜いたこと。最後の最後で諦めたこと。男の弱さを受け入れなかったこと。大切なものを傷つけさせたこと。悪意ばかり拾ってしまったこと。
今思えば、なんの原因もなく変わるはずもない。もっと、男の心に寄り添っていれば。彼の弱さに気付いていれば。
意味のないたらればは、歌仙に深い後悔を刻んだ。
最後に見た彼の顔はどうだっただろうか。交わした言葉はなんだっただろうか。諦めずにいれば、何かが変わっていたのだろうか。
何度も。何度も何度も。
考えて、想像して、やりきれない思いに叫びだしたくなる。
あれほど憎いと思っていたのに。殺意さえ抱えていたのに。記憶の中の男は薄れ、もう、声も、姿もはっきりとは思い出せない。
そのことが、今になって、寂しいだなんて思う。
そんなことを考えている歌仙を、誰かは許すだろうか。裏切り者だと断罪するだろうか。それならそれで構わない。
本当の罪人は、自分なのだから。