• テキストサイズ

夜明け

第6章 贖罪



18

 歌仙は己の罪について考えていた。

 何も、初めからあの男のことが嫌いなわけではなかった。初めは、そう、彼が歌仙を手にとったときは、彼もほかの審神者と変わらず期待に胸を躍らせ、「よろしく」と手を差し出してくれた。

 決して順調とはいかなかったが、それでも男は精一杯努力していたし、歌仙もその他の刀剣男士もその姿を認めていた。「主」と何の躊躇もなく呼べるくらいには、彼を慕っていた。

 初めて出陣した日のこと。男が歌仙の手料理を「おいしい」と笑いかけてくれたこと。重傷を負った歌仙を前に、涙したこと。鈴を贈ったときの、うれしそうな顔。どれも、確かに大切な、捨てることのできない思い出だった。

 一体、いつから狂ってしまったのだろう。

 それはきっと、弱っていることに気づけなかったから。
 泣きたいときに、我慢させたから。

 歯車は少しずつ、錆びた車輪のような音を立て、次第にはかみ合わなくなった。

 刀剣男士を見つめる瞳に憎悪が籠り、男はついに刀剣男士を遠ざけるようになった。無理な進軍。行われない手当。当てつけのように怒鳴り散らす日々。折れていく仲間に、歌仙は苦言を呈した。だが、言葉はもはや届かなかった。

/ 142ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp