第6章 贖罪
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歌仙は己の罪について考えていた。
何も、初めからあの男のことが嫌いなわけではなかった。初めは、そう、彼が歌仙を手にとったときは、彼もほかの審神者と変わらず期待に胸を躍らせ、「よろしく」と手を差し出してくれた。
決して順調とはいかなかったが、それでも男は精一杯努力していたし、歌仙もその他の刀剣男士もその姿を認めていた。「主」と何の躊躇もなく呼べるくらいには、彼を慕っていた。
初めて出陣した日のこと。男が歌仙の手料理を「おいしい」と笑いかけてくれたこと。重傷を負った歌仙を前に、涙したこと。鈴を贈ったときの、うれしそうな顔。どれも、確かに大切な、捨てることのできない思い出だった。
一体、いつから狂ってしまったのだろう。
それはきっと、弱っていることに気づけなかったから。
泣きたいときに、我慢させたから。
歯車は少しずつ、錆びた車輪のような音を立て、次第にはかみ合わなくなった。
刀剣男士を見つめる瞳に憎悪が籠り、男はついに刀剣男士を遠ざけるようになった。無理な進軍。行われない手当。当てつけのように怒鳴り散らす日々。折れていく仲間に、歌仙は苦言を呈した。だが、言葉はもはや届かなかった。