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夜明け

第5章 雨催い



「君が持っている鈴なんだが」
「あぁ、これ」

 俺は引き出しにしまっていた鈴を取り出すと、鶯丸の掌に載せた。

「歌仙が主って言ってたけど、やっぱり関係が?」
「そうだ。昔、歌仙が主に送った鈴だ」
「……気になってたんだが、」
「何だ?」
「初めから、関係が悪いわけではなかったんだな?」

 ずっと考えていたことを尋ねれば、鶯丸は俯いて掌の鈴に触れた。

「どうだろうな。少なくとも、俺たちはそう思っていた。…だが、結果が今だ。いつからか、どこからか、歪は確かに存在していたのさ」

 自傷気味につぶやく。その言葉に、何も返せなかった。

「過ぎたことを言っても仕方ない。これだが、」

 鶯丸は鈴をちりんと鳴らして見せた。

「君のところに、昨日も呪いが来ただろう」
「うん。部屋には入ってこれないみたいだが、結界は破られた」
「だろうな。この鈴が引き寄せている。可能なら焼いてしまうのが一番だ」

 やっぱり。そうではないかと思っていたが、呪いが結界を破り、言葉を発し、あそこまで力をつけたのはこの鈴を内側に入れてしまっていたからだった。

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