第5章 雨催い
「ーーーーー次に目を覚ますと、俺は人の理から外れていた」
鶯丸は何をいうでもなく、静かに俺の話に耳を傾ける。
「まぁ、そこに関しては感謝はすれど、後悔はしてない。生きたいと願ったのは俺だし」
俺の中にいる神様は、俺の願いを叶えたにすぎない。俺の死後、魂を貰うことを条件に。
「結局放火したやつは捕まったし、本家の人とも今はうまくやってる。傍仕えではなくなったけど、彼女との関わりがなくなったわけでもない」
「ーーーー、そうか…」
鶯丸は何か、大きな感情を飲み込むかのように感情を抑えた声で答えた。
「困ったことがあるとすれば、炎を見ると体が竦むことくらいかなぁ…」
「火が恐ろしいのか?」
「火っていうより、炎だな。それこそ、料理するときに火を扱うがそれに恐怖心を抱いたことはない。だが、キャンプファイヤーとか、焚火とかは駄目だ。あの日のことがフラッシュバックして、うまく息ができなくなるんだ」
誰にも明かしていなかったことを明かすと、鶯丸はまるで労わるかのように俺の頭を撫でた。
「慰めてくれてんの?」
「あぁ。好いたものには優しくすると聞いたからな」
「誰から聞いたんだよ」
「ふふ、秘密だ」
優しく鶯丸が笑う。撫でていた手が離れると、鶯丸は「それで、」と話を変えた。