第5章 雨催い
「もう、十年以上前の話だーーーーー」
ーーーーーー俺の家は、審神者を生業としていた。
ここでいう審神者とは、刀剣男士をまとめ上げる審神者とは全く別のものだ。本来、使われていた審神者の方である。
陰陽師とか、神職とか、そういわれた方がしっくりくるかもしれない。
俺は、分家の子だった。本家とは仲が良く、俺の一族は代々本家に仕えていた。
本家にも、俺と同い年の娘がいた。本来ならば長子である俺の兄が本家に仕えるはずだったのだが、同い年の方が何かと都合がいいと俺が仕えることになった。
本家の娘のことは嫌いじゃなかった。仲もよかった、と思う。彼女は努力家で、負けず嫌いだった。そんな姿を知っているから、猶更嫌いになんてなるはずもなかった。
周りの目が変わったのは、俺が小学校に入学する頃だったと思う。俺は所謂「天才」というもので、生まれながらに才能が与えられていた。もちろん、その才能を使いこなすための努力は惜しまなかったし、天才だからと言ってちやほやするような家でもなかった。
修行は厳しかったし、父にも、兄にも、扱き倒された記憶ばかりある。
父も、兄も、天才と呼ばれる俺を特別視なんてしなかったし、本家に仕える身として謙虚であるようにと叩き込まれていた。
彼女も、悔しがっていることはあっても、それで俺を恨んだりだとか、そんなことはしなかった。よいライバルとか思っていたと思う。