第5章 雨催い
「昨日、君が持っていた鈴のことで来たんだが…」
鶯丸はそこで言葉を切ると、俺の頬へと手を伸ばしてきた。
「何、」
す、と冷たい指先が頬にふれる。ガーゼの上を辿って、眉をしかめた。
「燭台切か」
彼の言わんとしていることを察し、頷く。鶯丸はため息を吐いて、また優しく俺の頬に触れた。
「すまない」
珍しく落ち込んだ様子の鶯丸に、首を振る。
「いいって。俺も油断しすぎてた」
「いいことあるものか。君を守るための契約だったんだが、君には痛い思いを何度もさせてしまっている」
思わぬ真実に、瞠目する。鶯丸は言葉を続けた。
「もちろん、他の刀剣男士の意図は別だったがな。君が条件を出してくれるかは、賭けでもあった」
「……なぜ?少なくとも、俺が初めてこの本丸にきた日、そんな素振りを見せた刀剣男士はいなかった。お前でさえだ」
「そりゃあ、君と言葉を交わす瞬間までは、特に何も思っていなかったからな」
「つまりどういうことだ?」
鶯丸の考えていることが分からず、先を促す。鶯丸は俺の頬から手を離すと、優しく微笑み言った。
「君に惚れたのさ。俺は、君のことを気に入っているんだ」