第5章 雨催い
手伝い札を使い、素早く済ませると彼に刀を確認してもらう。
油断していたのだ。もしかしたら、驕っていたのかもしれない。
手入れのすんだ、その美しい刀身が頬を横切る。風を感じた瞬間には、頬に熱。はらりと髪が数本落ちて、ようやく理解した。
そっと頬に触れると、ぬるりとした感触。血だ。
「ははっ、間抜け面」
驚いて声も出ない俺を、燭台切は馬鹿にするように笑った。
『童が生意気な』
俺が反応するよりも早く、頭の中で響く声。勝手に動き出しそうになる右手をなんとか抑え込むので精一杯だった。
この感じだと、契約のことやら、神格が一時的に下がることやら、どうでもいいんだろうなと分かる。それがどうでもよくなるくらい、憎んでいるんだろう。
大きなため息を吐きそうになるのを耐え、さっていく燭台切の背中を見送った。