第5章 雨催い
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燭台切が手入れを受けることになった。仲間に諭され、仕方なく。碌に会話をしたことがなく、視界に入れば殺気を飛ばされるのが常だった。
人を憎んでいるのなんて聞くまでもなく、人を許せないことも彼の様子を見ていればすぐに分かる。
「人を許せない。僕らと同じ思いをさせたい。でないと気がすまないんだ」
三日月と話しているところ、たまたま耳にした言葉たちだった。詳細は未だ分からないが、刀剣男士と暮らすようになってはや数か月。彼らがどんな扱いを受けてきたのか、知る場面は多々あった。
だから、その言葉を聞いても、まぁそうだよな。と納得するほかないのだ。
目の前に座る燭台切は、鈍く光る金色の瞳で俺を鋭く睨む。
「まさか、手入れされる日が来るなんてね」
心底いやそうに、悔しささえ滲ませた声で呟いた。彼が手入れを望んでいないことなど知っている。だが、手入れを受けない限り、この本丸に俺が居座り続けることにも薄々気づいているのだろう。
「外傷はそれほどひどくないから、すぐに終わると思う」
連日の寝不足で、はっきりしない頭で手入れに取り掛かる。霊力云々よりも、睡眠不足の方が問題だな。頭の隅で考えながら、丁寧に霊力を流し込んでいく。