第5章 雨催い
鈴をもち歩いていると、聞くまでもなく誰もが顔を顰める。穢れはついていないが、やはり何かを感じるらしい。あからさまに俺を避ける刀剣男士もいた。
「審神者殿、失礼だがその懐にあるものを見ても?」
広間にて、切り出したのは石切丸だった。周りにいたもの達も気になるようで、視線は俺に集まっていた。
石切丸なら大丈夫だろう。いいけど、と懐から取り出した鈴。息を呑んだのは誰だったか。
「主…」
小さな小さな声で呟く。歌仙だった。
誰もが歌仙を振り返る。歌仙は、はっとして口を噤んだ。気まずそうに逸らされた視線。力の込められた拳。伏せられた瞳は揺れていた。間違いなく、傷ついた顔だった。
心当たりがあると言っていた。もしかして、そういうことなのだろうか。
俺が声をかける前に、歌仙はたまらずその場から去っていった。