第5章 雨催い
そして、その日を境に本丸には離れ以外にも結界が張られた。主にやってくるのは離れだろうということで、離れの結界は念のためと二重にした。
しかし、懲りずに毎夜毎夜何かは来るようで、ついには結界を壊し障子を破ってきた。
「……まずいな?」
思わず呟けば、こんのすけは涙目になりながら叫んだ。
「まずいなんてもんじゃないですよぉ!」
思ったよりも短期間のうちに力をつけているようだが、流石に入ってくることはできなかったようだ。三日目でこれとなると、あと四日、果たしてもつのかどうか怪しいところである。いざとなれば強制的に祓うことも視野にいれないといけない。
怯えて毛が逆立っているこんのすけを腕に抱きながら、障子を開ける。廊下にはいつもの足跡と腐敗臭。今日はそれとは別に、小さな鈴が落ちていた。
「鈴?」
鈴の気配からして、刀剣男士の持ち物というわけでもなさそうだ。だが、呪いが持っているにしては穢れがないのが不思議である。
ここにそのまま、というわけにもいかないので、そっと拾い上げ懐に忍ばせた。
『持っておく気か』
見かねたのだろう。不快を隠そうともしない声が響く。
「捨てるわけにもなぁ。刀剣男士に聞いて大丈夫なやつかな」
『…まぁ、相手は選べよ』
許可が下りたということは持っていても支障はないということだろう。頷いて広間へ向かった。