第5章 雨催い
「とりあえず、結界を本丸全体に張ろうと思う」
「それは構わんが、他の刀剣男士への説明はどうする気だ?」
三日月の問いに悩む。呪いのことを話せば、確かにここに住む刀剣男士の不安を煽ることになるだろう。何より一番心配なのが、呪いに引っ張られ、堕ちてしまう可能性が零ではないということだ。
いくらましになったと言えど、完璧に浄化されたわけでもなければ、蟠りがなくなったわけでもない。中には強い憎悪を抱えている刀剣男士もいる。
「……彼らへの説明は、一旦保留にしよう」
答えたのは歌仙だった。
「何故?」
三日月が歌仙に尋ねる。
「僕には、この呪いに心当たりがある。……確信を持つためにも、少し時間がほしい」
何やらずっと考えこんでいるとは思っていたが、そういうわけかと納得する。
『それほど悠長にもしておれんぞ』
頭の中で声が響く。それは俺も感じていたところではあった。
『待って一週間だな。それ以上はお前に危険が及びかねん』
分かった。声には出さずに返事をする。この危険というのは、外傷ではなく魂うんぬんの問題なのだろう。
「…待てるのは一週間だ」
「ああ、充分だ。それより、君は平気なのかい?」
問われ、首を傾げる。
「結界さ。本丸全域に張るとなるとかなり霊力を消費すると思うんだけれど」
「それなら大丈夫だ。結界を張る程度ならどうってことない」
「その霊力の量であればそうだろうな。…鶴丸辺りがうるさくなりそうだが、その辺りは俺が請け負おう」
「ありがとう、三日月。正直助かるよ」