第5章 雨催い
目が覚めると、離れの障子は黒くなった手形まみれだった。
「何だこれ…、気味悪ぃ」
思わず口から漏れ出たのも仕方がない。もしやと思い障子を開けると、廊下にはこれまた同じように黒い足跡。気になったのはそれだけじゃない。鼻を突き抜けるかのような腐敗臭が漂っている。
「これ、生きてるやつじゃないよな…」
『吾は忠告したぞ』
「いや、まさかこっちとは…」
『鈍くなりすぎだ』
「返す言葉もないな」
取り敢えず掃除をした後、念のため浄化作業も行う。ここ最近は張っていなかった結界は再び張ることに。
「これでマシになるといいんだけど…」
つぶやきながら、気配をたどる。どこか既視感のある気配に、果てどこで感じたものかと記憶を掘り起こすも、思い出すには至らなかった。