第1章 オトモダチ
「らっしゃいませー」
バイトのやる気の無い声を背中で聞きながら、マヨネーズ売り場に迷わずに行った。マヨだけに。
キュー〇ーマヨネーズを手に取ったとき。
「土方・・・?」
「っ・・・?!」
「マヨネーズ・・・そんなに買うの?」
「あ、二階堂か」
「何よ、今気づいたの?」
いつも高い位置で縛っている髪は下ろされている。
また、いつもは掛けていない眼鏡を掛けている。
初めて見る私服姿だ。
土方が気づかないのも仕方がない。
「あ」
「?どうかしたか?」
「いえ、今日はごめんなさいね。委員会」
「あぁ、別に気にするな。用事か?」
「え?あ、あぁ、まぁ・・・」
しまった。野暮だった。
土方は慌てて話題を変えた。
「二階堂は何しに来たんだ?」
「えーと、おやつを、買いに来たのよ」
「おやつ?」
「そうよ。お腹減るから、この時間て」
「だが、ここのコンビニじゃ無くても良くねーか?
家から結構あるだろ」
「銀八の家からは、ここが一番近いのよ」
「銀八の家って、ここら辺なのか」
「そうよ。行く?」
「は?!」
「あ、家の方が心配するかしら?」
「いや、そういう問題じゃねーだろ・・・」
「じゃあどういう問題?」
「いや、まぁ・・・その・・・」
「無いじゃない」
「・・・」
「無理に、とは言わないわ」
「そうしてくれ」
「あとね、私はさっき、嘘をついたわ」
「嘘?」
唐突だなと思いながら、土方は耳を傾けた。
「正直ね、銀八と二人きりでいると、なんか・・・居心地が悪いのよ。だから、少しだけ出てきたの。気持ちを落ち着けるために」
「・・・」
「誰かに、いて欲しいのよ」
二階堂は、胸に手をギュッと置いて俯き加減に続ける。
「銀八といると・・・銀八の顔を見ると・・・」
土方は、じっと二階堂を見た。
二階堂の顔は真っ赤だった。
「胸が・・・」
二階堂が言葉を紡ぐ度、土方の心臓はドキドキと音を立てた。
自分でも顔が強ばってくるのが分かるくらい緊張している。
「胸が、」
「・・・」
「ムカムカするのよ」
・・・え?