第1章 オトモダチ
「やめェェェェ‼」
剣道場に、近藤さんの声が響く。
「蹲踞‼ 納め、刀‼」
剣道部員の殆どが風紀委員のため、今日は早めの切り上げとなった。
「礼‼」
「「「「「ありがとうございましたァ‼‼」」」」」
只今6時30分過ぎ。
約二時間の稽古を終えた隊士・・・いや、部員たちはへとへとだった。
「風紀委員はこのあと委員会あるからな。
早めに支度終わらせろよ‼」
近藤さんの言葉に、はい‼と言う返事。
剣道部は意外と大変だ。
「おい誰の手拭いだ?!」
「おいファブ〇ーズ持って来い‼」
「うわお前臭ェ‼」
「お前のが臭ェよ‼」
「シャワー浴び行かねーとな」
「手ェ臭ッッ‼」
「あー、袴と胴着おろしたてだがら、身体中真っ青だわー」
「色、落ちづらいんだよなー」
「そーなんだよ、めんどくせぇ‼」
とまぁこんな具合だな。
ただ、
「あ、沖田君だ‼」
「あ、いいなー‼沖田君の手拭いお持ち帰りしたいッ」
「ああ、汗かいてるぅ‼」
「「「「「カッコいいいいい‼‼」」」」」
「このタオル使って下さい‼」
「いや私のを‼」
「私の方がフカフカよ‼」
「総悟くーーーん‼」
例外も居るようだ。
立ってるだけでタオルやらペットボトルやらが出てくる。他の部員の士気が下がるからやめて欲しい。
後で総悟に言っておかねーとな。
「いや、トシもだぞ?」
体育館の窓ギリギリまで来ている女子に目を向けながら、近藤が言う。
「近藤さん、勘弁してくれ。
ありゃ総悟のだ」
「いや、土方君、トシだけだから、この部は」
恨めしそうな顔で眺めている近藤。
部長の士気も下がるのか。