第2章 【孵】-へんたい-
準備を済ませ、メモに残してくれた山吹さんのマンションへ向かう
チャイムを押すと
ホッとした顔の山吹さんが迎え入れてくれた
入り込むなり何かを察知したのか
ネウロが楽しそうな表情になる
「で、問題のぬいぐるみは今手元にありますか?」
「えぇ、これよ」
「アヤセ、少し我が輩の顔を隠せ」
小さく呟いたネウロが私の後ろに回り込む
何かと思ってそっと後ろを見ると
ネウロが来たときに見た怪鳥の様な頭部。
大きなクチバシが開き
そこから大きな丸い何かを吐きだした
それは、人の眼球の集合体の様な球体。
魔界の凝視虫【イビルフライデー】
「行け」
ネウロが小さく呟くと、目玉の集合体は分解し、散る。
それぞれに細い手足のようなものが生えていて
部屋の探索を始める
「ネウロ!やばいってこれ!!」
「心配はいらん。普通の人間には見えん。あれは現場の微かな言わば『ほころび』を見つけるための道具だ。そら、一匹何かを見つけたようだ・・・」
「あの、オーナーさん・・・?」
「心配いりません!うちのオーナーはこうやって現場でアホみたいに突っ立っているだけで解決できるのです!」
ぬいぐるみを私の手から取り、躊躇なくそれを引き裂く
「さっそくオーナーがこんな物をみつけました」
中から出てきたのは、盗聴器。
「どうやらこれはGPS機能がついている物ですね。これで貴方を付けまわしていたんですね犯人は」
「犯人・・・?」
「えぇ、オーナー曰くこれは人の仕業だそうです」
「ぬいぐるみを燃やしたりしたのに・・・!?」
「簡単な事です。同じぬいぐるみを大量に用意していたんですよ」
「え・・だってこのぬいぐるみは死んだ元彼の・・」
動転する山吹さんを尻目にネウロが囁く
「我が輩が合図したらお前は【犯人はお前だ】と指さしてやれ」
「犯人なんているの?わかるわけないよ!」
「案ずるな。我が輩が貴様の指を犯人に導いてやろう。お前は我が輩の傀儡として高らかに声を上げれは良い」