第3章 【苦】―こみかるらいふ―
「あっちの方向に『謎』の気配があるぞ」
倒れた私の頭を掴み、無理やり立たせる
ネウロが指さした先の窓を覗くと近くの公園が見える。
「ネウロ一人で行くわけには行かないの?」
「この蛆虫が。我が輩単独だと目立って仕方がない。だから隠れ蓑にお前を選んだというのに」
指先に力を込められる
「いだだだだだっ!わかったから!準備するから!」
「人間の間ではこういう時確か的確な言葉があったな」
『3.5秒で支度しな!』
「元ネタより随分短っ!」
ネウロが追い立てる様に指先からちらちらと火を出して私をつつくフリをする。
観念して本を閉じ、玄関へ向かった。
こんな天気の良い午前中から事件なんて本当に起こるんだろうか?
公園に向かいながらネウロは私の腕を持ち上げ、ネウロの腕に組ませた。
「これで遠目から見れば単なる散歩中のカップルにしか見えまい。アヤセ、もうすぐここで人が襲われる。悪意がどんどんこちらに近づいてくる。その悪意が他人に襲い掛かる瞬間を見逃すな。事件が起こる前にその悪意と、喰う」
「ネウロの主食は『謎』じゃなかったっけ?」
「あくまで主食だ。そら、もうすぐ『悪意』がやってくるぞ」