第2章 【孵】-へんたい-
ぐぐ、と私の指が勝手に動く
ネウロの方を見ると、「今だ」とばかりに頷く
こうなったらもうヤケだ。
「犯人はお前だッ!!」
私の指はあろうことかクローゼットを指さしていた
「え?え?」
キョトンとする私と山吹さん
「さすがオーナー!つまりこういう事ですよね」
ネウロがクローゼットを開け
さらにその上の換気口の蓋を取る
ネウロに頭を掴まれそこから顔を覗かせたのは
・・・誰だこいつ!?
山吹さんの表情が青ざめる
「なんで・・・死んだって聞いたのに・・」
どうやら死んだ元恋人らしい。
「え・・?どういう事???」
ハテナだらけの私の代わりにネウロが話し出す
「死んだっていうのは本人が流したデマという事ですね。さしずめSNSででも訃報を拡散させたんでしょう。」
PCの前をうろついていたイビルフライデーがネウロの指先に止まる
「山吹さんと別れた後、何度も復縁を迫るものの断られ続け、興味を引きたいがために死まで偽装した。しかしあまり効果がないので、それを隠れ蓑にして山吹さんをストーキングしていたわけですね?とオーナーが推理しました」
「うわぁぁぁあ!死んでまでお前を見守っていたのに!裏切り者!裏切者ッ!!」
発狂した元恋人は持っていた刃物を振り回す。
確実にネウロに当たっているのに怪我すらしない
ただ冷徹な表情で元恋人を見下している。
「こちらに来てから初めての食事がこれか・・・チッ、まぁいい」
「いただきます」
怪鳥が犯人の頭を咥える
瞬間、その場の淀んだような空気が消え去った
「ふむ・・・まぁこんなものだろう」
後に残されたのは、放心した山吹さんと、その元恋人。
「あの・・・警察呼んできますから・・」
私にはこれが精いっぱいだった