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脳漿奇譚  【魔人探偵脳噛ネウロ】

第2章 【孵】-へんたい-


その日は結局あまりお客さんが来なかったので
少しだけ早めに閉店の準備をする。

このあと山吹さんの家に行かなければならないから

テーブルを拭きながらネウロに話しかける


「ねぇ、ネウロ、ここに来る前はどこにいたの?」
「魔界だ。尤も、その前は別の次元の地上に居たこともあったがな」


「どういう事?」


「今我が輩がいるこの地上ととても似ている所だ。おそらくはパラレルワールドという物だろう。ヒトも文化も、ほぼ同じだ」

「前にいた所には戻らないの?」


「元の地上とこことはまた別の匂いがしたからだ。貴様ら人間だって同じ食事でもフレーバーが違う物を見たら食べてみたくなるだろう?」


「確かに」


「そういう事だ。味見を堪能してこの地上に飽きたら我が輩は前にいた地上に戻るつもりだ」

「・・・早く戻って頂きたいなぁ」

「何か言ったか?アヤセ」

「いいえ・・・」


「さっさと閉店準備を終わらせろ。我が輩は早く先ほどの女の謎の味を見たいのだ」


お店に鍵をかけ、居住部分の二階に上がり私服に着替える。


「時にアヤセよ」

「うわっ・・・!着替え中なんだから出てってよ!」

「貴様の貧相な肉体には興味がない」

「豊満なら興味があったって事?」

「お前は少しおしゃべりが過ぎるな」

着替え中の私にかまわずに首根っこをつかまれる


「・・・しかし、貴様の匂いには興味がある」


「・・・匂い?」

「若干の瘴気を含んだようなお前のその匂いだ」


ぐいと顎を掴まれ、顔と顔の距離が近くなる


「もっと近づきたいと思うようなその匂いだ。ここの客も無意識にこれに引き寄せられるのだろうな」


ネウロは私の髪を一束掬い上げ、口付けを落とした



途端に焦げて落ちる髪の毛



「ぎゃーッッ!私の髪ッ!!」


「すまんな、つい酸が出てしまった」
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