第2章 【孵】-へんたい-
「そうね、じゃあ折角だから。他のお客さんもいなし。・・・信じてもらえないかもしれないけど」
カップの中身を一口飲み、女性客は話し始めた
「最近、変な事が起こるの。私はこの近くで独り暮らしをして・・・」
言い淀んでしばし沈黙。言いにくそうに女性が口を開く
「ぬいぐるみが・・・。起きたら机に置いてあったりするの」
「ぬいぐるみ・・・ですか??」
「えぇ。昔付き合っていた人がいて、別れてしばらくしてからその人が死んだという報せが来て、ずっとしまっていたその彼から貰ったぬいぐるみがある日突然机の上に置いてあって、気味が悪いから捨てたんだけど、数日たつとまた部屋の中にあるのよ」
「け・・警察には?」
「一応相談したけど、オカルトじみているから信じてもらえなかったわ。他に害がないから変質者の仕業としても、何か起こらないとパトロール以上の事は出来ないって言われたわ。
そのぬいぐるみをお祓いに持って行ったり、自分で燃やしたりもしたわ。それでも同じものがいつの間にか戻ってくるのよ・・・」
「良ければその事件、うちのオーナーが解決して見せましょう!こう見えてオーナーはそのテの事件については超のつく程のベテランなんです!」
キラキラした笑顔でネウロが口を挟む。やっぱり私に選択の余地はないみたい。
「本当?でもお金かかるんでしょ?」
「いえいえとんでもない!無事解決出来たら引き続きここのお店の常連さんになって頂けるだけで結構です!」
ちょっと待って、
解決できなかったらお客さんを一人失うって事!?
なんて勝手な!
悩みを吐きだしたお客さんは少し安心したのか、くつろぎながらカプチーノをおかわりする。
「では早速、今夜調査に向かいましょう!お客様、お名前を伺っていませんでしたね」
「あ、そうね。私は山吹一花です。本当に今夜来てくれるの?嬉しい、怖くて仕方がなかったのよ・・」
そういいながら山吹さんは渡した紙とペンに住所や電話番号を記入する
「それではこのお店が閉店後にオーナーが向かいますのでもうご心配はいりません!」
勝手に今後の予定を決めて行くネウロ
これは今夜行くしかないみたい。
でも、本当に解決できるの?
ネウロは【謎】を食べにき地上に来たと言っていたけど
私から見ればネウロの方が謎だらけだよ。