第1章 【繭】 ―プロローグ―
その日私はいつもと変わらぬルーチンをこなすべく買い出しに出かけていた。
私は早くに両親を亡くし
行き先を無くした私に唯一の親族である叔父が
一つのお店を与えてくれた。
かつて叔父が若い頃に経営していた喫茶店。
経営の基礎と共に必要な仕器や食器類も
そのまま譲り受ける。
奥まった所にあるそのお店は
私の腕ではまだまだ繁盛はしないけど
叔父のお陰でなんとか食べていける程度には切り盛りすることが出来た。
今日も開店にむけて、店内を掃除し、カウンターへ向かう
お店をやるのは楽しいんだけど、ここしばらく来てくれるお客さんが何だか陰鬱な雰囲気の人が多くなった気がする。
皆悩みを抱えているんだろうか?
そういう人は何故か通ってくれるので
このお店が気に入らないわけでもなさそう
特に問題が起きるわけではないし。
きっと世の中がそんな感じなんだろうな
気を取り直して器具を磨こうと布を取り出す。
「その原因が知りたいか?」
思わぬ声にぎょっとして顔をあげると、そこには男の人がいた
「え!?・・・あっ、今お店準備中なんで」
言いながら扉の「Close」の立札を確認し、
男に視線を戻すと