第17章 ゲーム・オーバー〔切原赤也〕
ゲームセンター特有のがちゃがちゃとうるさい喧騒の中でも、私が負けたことを告げる電子音は、とてつもなくはっきりと耳に入ってきた。
ディスプレイには無慈悲にも「You Lose」のあと「Game Over」の文字が浮かび上がる。
「え…嘘、でしょ、なんで」
「ほら、やっぱ俺が勝ったな! さーっすが俺!」
格ゲーのゲーム機を前に呆然とする私を尻目に、容赦なく盛り上がっているのは、向かいのゲーム機を操っていた切原。
さっきまで何度か対戦して、全部勝っていたのに。
だから切原が悔しそうに「これで最後にするから賭けようぜ」と言ったのにも、何を賭けるかなんて特に気にもせずにあっさりOKしたのに。
技をいくら出してもあっさり避けられて、切原の使うキャラにはほとんど当たらなくて、もう文字通り完敗だった。
ディスプレイの中では、わたしが気に入って使い続けているイケメンキャラが無残にも地面に横たわって、ぴくりとも動かない。
何度見返しても負けは負けで、切原のこういう勝負強さってやっぱりテニスでも役立っているんだろうなと思ったけれど、口から出てきたのは正反対の言葉で。
「こんなところで勝負運使っちゃっていいわけ? テニスの試合で勝てなくなっても知らないよ」
「俺は負けねーの!」
「さっきまで全敗だったくせに」
「あれは練習だっつの! 本番が大事なんだよ、本番が」
いっそ気持ちいいくらいの負け方だったから悔しさはほとんどなかったけれど、一応悔しいふりをして「あー、はいはい」と適当な返事をしたら、切原は「なんだよその言い方、気に食わねー」とかなんとかぶつくさとひとりごちて、それからはっきり言い放った。
「明日、一日俺の言うこと聞いてもらうからな!」
「はいは……、え? はあ?!」