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短編集【庭球】

第15章 名もなき詩〔千歳千里〕*


千歳がせわしなく、たぎる雄を取り出す。
おそらく他の人よりかなり大きいだろうそれは、痛そうなほどに充血して昂ぶっていた。
これからもたらされる快感を想像して、私の中心は涙までこぼして悦んでいる。


「渚のここ、ひくひくしよる…やらしかね」


湿度の高い囁きと同時に、肉食獣の瞳が、すうと細められた。
千歳の先端がぴたぴたと卑猥な音を立てながら、その大きさを誇示する。
はやく、と蜜壷がうねるたびに、粘着質な水音は音量を増した。
それに満足したのか、千歳の口角がきゅっと上がって、硬くて熱い塊が入ってくる。

こんなに大きなものがちゃんと入るのかと毎回心配になるわりに、しっかり咥え込んで離さない私は、やっぱりいやらしい。
散々焦らされて、欲しかった刺激をようやく与えられて、それがまた期待以上で嬉しくて、もう達してしまいそうだ。
千歳の無骨な律動が、強烈な快感と圧迫感を同時に運んでくる。



「さっき…なんば、考えよったと…?」


激しい行為の中、不意に驚くほど優しいキスをくれた千歳の目は、さっきのぎらついた肉食獣のそれではなくなっていた。
ときどきこんなふうに、千歳の瞳はぐらぐらと揺れる。
段ボールの中で切なげにくうん、と鳴く捨て犬のような、あるいは道に迷った小さな子どものような。

冗談じゃなく脳みそに直接囁きかけているんじゃないかと思うくらいに、それは何よりも私の後ろ髪を引く。
もうこれっきりにしようとか、この関係から卒業しなきゃという理性を力強く抑えつけて、今回だけ、もう少しだけという劣情が顔を出す。


「なんでも…なッ、んぁ…!」


私は千歳を、都合よく利用してしまっただけだから。
言えない、言えないよ。
今さら好きだなんて。

口ほどにモノを言うらしい目を、ぎゅっと閉じた。
その間際、視界にとらえた千歳は、揺れる瞳に悲しみをたたえていた気がした。
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