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短編集【庭球】

第14章 おかえり〔忍足謙也〕


結衣ちゃんと付き合わへんのやったら、また前みたいにここに来てもええんかな、なんて思いながら窓を開けようとしたら「なあ、ちょお待って」と呼び止められて。
それまで静かやった心臓が、急にぴょんと跳ねた。

謙也に掴まれた右腕が、あつい。
ついでに頬も、あつい。

できる限りの平静を装って「ん? なに?」って振り返ったら、少し影になった謙也の顔がめっちゃ真剣で、息が止まりそうになった。


「ほんまは、全国で優勝してからカッコつけて言うつもりやってんけど」


心臓が、うるさい。


「渚のこと、好きや。ずっと、好きやった」


謙也の手に、ぎゅっと力がこもった。


「…結衣ちゃん、は、ええの?」
「あいつのこと好きなんて、俺一回も言ったことあらへんで」


純粋な嬉しさと、こないな嬉しいことがあってええんかなっていうほんの少しの心配と、好きでおってもよかったんやっていう安堵と。
いろんな感情がごちゃまぜになって、「私も好き」って言うはずやったのに、代わりに出てきたんは本日二度目の涙。

言葉が出えへんから思いっきり抱きついたら、謙也は「だっ、大胆すぎやろ!」なんて顔を真っ赤にしながら、ふらつきもせずに私を抱きとめてくれて。
そのたくましさに驚きながら、私は何度も何度も、心の中で呟いた。

「おかえり、謙也」と。


fin







◎あとがき

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
初謙也、いかがでしたか。

全国Vを手土産にかっこよく告白するつもりだった謙也。
凹んでいた理由は、試合に出られなかったことよりも負けてしまったことよりも、手土産がなくなってしまったことだったのかもしれません。

実は幼馴染みヒロインを書くのも初めてです。
何を隠そう、私には男女問わず幼馴染みというのがいないので、書きづらかったからです。
まあ、なんとなく、それっぽい感じにはなったんじゃないかと自負しておりますが…いかがでしょうか。

手厳しいご意見もお待ちしておりますので、ぜひお寄せください。
あ、甘々のご感想ももちろんお待ちしております!笑

20160901 最終ページに追記。結衣ちゃんとの関係をはっきりさせておこうと、台詞を書き足しました。
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