第11章 教師にラブソングを〔渡邊オサム〕
「おおきに」
「ん。気にせんでええよ」
「ほんまに、ありがとう。出てみよかな、それ」
「お、ほんま?」
「うん。誰に言えばええの?」
毎日飽きるほど一緒におった白石が勧めてくれたんやから、騙されたと思って乗ってみよかなっていう気になった。
小さな記事の最後に、三年七組の軽音楽部の男子の名前があって。
明日立候補してくるわ、と白石に宣言する。
「ほな、この記事はもういらんな」
「ボーカルが私でよければやけどな」
「大丈夫やろ。ちょうどよかったわ、俺の書いた傑作小説がどうにも削れんで困っとったから。もうこの記事外してまお」
「え、もしやその募集記事が邪魔やったから私に声かけたん?」
「まあ、そうとも言うな。ちゅーか、どっちか言うとそっちが主目的やったかもしれへんな」
「ひどー! せっかくええ話やったのに台無しやっちゅーねん!」
泣いてしまいそうやったから、オチをつけて笑いに変えてくれた白石の優しさが身にしみた。
そして白石と、テニス部のみんなに感謝した。
想いを告げるなり諦めるなり、あるいは断ち切るなり蓋をするなり、自分から何かアクションを起こさんことにはずっとこのままやって、いつまでも引きずっとったらあかんでって、背中を押してもろた気がした。
次の日、七組の山本くんって子に声をかけたら、放課後のバンド練習に来てくれへんかって言われて。
いきなりバンド演奏で歌わされたけど、山本くんとあと二人のメンバーも、私の歌を気に入ってくれたらしくて、一緒にやろうやってトントン拍子に話が進んだ。
メンバーの一人は二年生で、音楽の趣味が合うから財前と仲がええんやって言うから、すぐ仲良くなった。