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短編集【庭球】

第10章 Body & Soul〔仁王雅治〕*


「ああ、まあ…。それより、よく運転なんてできたよね…信じらんない」
「運転なんて、隣で見てりゃ覚えるぜよ。真似ごとは得意分野じゃき」
「そういう問題じゃないの! 犯罪! もう絶対しないでよね!」
「プリッ」
「もう…!」


興奮冷めやらぬ私の唇を、雅治が人差し指でそっと触れて。
「もう言いっこなし、な」なんて言って、私を黙らせる。
その瞳が濡れたように艶っぽくて、思わず息を飲んだ。

顎をとらえられて、深い深い口づけが落ちてくる。
狭い密室が、漏れる水音を増幅させて。
唇が離されると、私の呼吸はずいぶん上がってしまっていた。


「…ん、はぁ……」
「あんな姿見せられて、生殺しやったからのう…待ちきれんぜよ」


言い終わらないうちに、雅治が運転席のドアを開けて、外へ出た。
「おお、これ」と言いながら、キーを投げてよこす。
私も外へ出て、生温い夜の空気を吸い込んだ。



あのあと、部屋へ向かうエレベーターホールでもベッドでも、散々虐められたのだけれど。
余裕がなさそうな顔を何度か見せてくれたから、許してあげようと思った。


fin








◎あとがき

読んでいただき、ありがとうございました。

ピンクな妄想が爆発してしまった作品、いかがでしたでしょうか。
ちなみにタイトルは、車でBGMになっていた設定のジャズ、コールマン・ホーキンスの名盤から。
身も心も、なんて、素敵ですよね。


社会人になって高校生と付き合うってなかなか勇気がいることだと思うんですが、仁王くんならなんとなく許されてしまいそうだな、なんて思いながら書きました。
無免でも、仁王くんなら難なく運転できそう。

なんてったって詐欺師ですし。
なんてったって手塚やら真田やらに変身できちゃうし、見た目で捕まることも絶対ないでしょうし。
いや、もう無免でいいから仁王くんの運転する姿を隣で眺めていたい…と冗談はこれくらいにして。
無免ダメ、絶対! ですよ!

くだらないあとがきにまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
少しでも楽しんでいただければ、うれしいです。
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