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短編集【庭球】

第10章 Body & Soul〔仁王雅治〕*


「…雅治? 起きてるの?」
「なあ…今日はえらくエロい格好じゃのう」
「え」


心の内を見透かされたようで、どきりとする。

会えなかった間、私はとても淋しかったのだけれど。
電話をしていてもLINEをしていても、雅治はあまりそういうそぶりを見せてくれなくて。
本人には言えないけれどお世辞抜きにかっこいいから、きっと学校でもモテるのだろうと思ったら、そわそわしてしまって。
私の方が子どもみたいで悔しかったから、今日は背伸びをして大人の女を演じていたつもりだった。

タイトスカートと黒のストッキング、九センチヒールのパンプス。
普段はパンツスーツ、休みの日はカジュアルな格好をすることが多い私の、できる限りの武装。



「誘っとるんか?」

私の手を包んでいた雅治の手が、太腿に移動する。
下着が見えてしまうくらいにスカートをずり上げられて、太腿が丸出しになった。
ゆっくりとストッキング越しに撫で上げられる感触に、全身がぞくぞくと粟立つ。

「ひゃ…っ」
「っと、ちゃんとハンドルは持っときんしゃい」
「…んんん…」
「黒のパンストなんて穿いて、最初からこうされるの待っとったんじゃろ?」

雅治の艶っぽい声が耳に直接降ってきて、身体がびくんと震える。

待っていた、のかもしれない。
いや、間違いなくそうだった。
たまには高校生らしく、必死になって私のことを求めてほしかったのだ。
その証拠に、下着だって滅多に身につけないTバックを選んだのだから。


けれど、運転中にこんな展開になるなんて、まったくの想定外。
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