第67章 星を数えて〔財前光〕
そのうちの一つが叶ったのは、二カ月前のこと。
そろそろ願いが成就したことを形にしたいと思っていたタイミングで訪れる自分の誕生日を、利用しない手はなかった。
ネイビーのシックな包装紙を丁寧に剥いで、そっと蓋を開ける。
真っ赤な石が一粒、きらきらと輝くスタッドピアス。
「かっこええな。つけてみてええっすか」と言った俺に、先輩はポケットから小さな鏡を出してくれた。
鏡を覗き込むと、知らず知らずのうちに自分の口角が上がっているのがわかった。
右耳につけていた赤色の輪を外して、代わりに貰ったばかりのピアスをつける。
誕生石でもある赤色の石。
少し大きめなのは奮発してくれたから、だろうか。
一番好きな色は、箱に納まっていたときよりも乱反射する光が綺麗に見えた。
「どうっすか」と尋ねると、先輩は「よかった、よう似合ってる」と安心したように微笑んだ。
「自分で言うのもなんやけど、俺もそう思いますわ」
「…なあ、せっかく五輪ピアスにしてたのに、赤だけ違うのにしてよかったん?」
外されて行き場をなくした赤の輪っかを見て、先輩がぽつりと言う。
こういう形でお払い箱になるのはまさしく本望なのだけれど、それを説明するのは気恥ずかしい。
それに、言ってしまえば他の二つの願いも言わなければいけなくなりそうで、それはもっと照れくさい。
少し迷ってから、俺は「先輩から貰ったやつが一番目立った方がええやろ」と言った。
お茶を濁した感はあるけれど、あながち嘘でもないからいいだろう。