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短編集【庭球】

第10章 Body & Soul〔仁王雅治〕*


*裏注意
*仁王=高校三年、ヒロイン=社会人設定






車の流れが、完全に止まった。

カーナビには渋滞を示す赤い線が点滅していて。
その予告通り、目の前には無数のブレーキランプが延々と連なっていて、はまってしまった渋滞が途方もなく長いものなのだと思い知らされる。

この先で多重事故があったと教えてくれたカーラジオを切って、ハードディスクに入れたジャズに切り替えた。
長期戦を覚悟して、サイドブレーキをぐっと引く。
せっかく久々のデートなのに、と思わず漏れそうになったため息を、氷がほとんど溶けて薄まったアイスコーヒーと一緒に飲み込んだ。
助手席の雅治が、あくび混じりに呟く。


「なかなか動かんのう」
「試合で疲れてるでしょう、寝てていいよ」
「…プリッ」

相変わらずよくわからない口癖を発して、六歳下の恋人は頬杖をついた。






六歳差、高校生。
改めて言葉にすると、社会人二年目の私がものすごく悪いことをしているような気にさせられるのだけれど。

どこか冷めた言動とか、誰を前にしても物怖じしない性格とか、アンニュイな表情とか。
大人びた雅治は、制服を着ていることを除けばとても高校生には見えない。
むしろ私よりも年上なんじゃないかと思わされることもあるほどで。

ベッドの上での振る舞いも、そのひとつ。
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