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短編集【庭球】

第62章 Stand up, baby!〔桃城武〕


*この作品は、原作のとあるシーンを、完全になかったものとして無視しています
*抵抗があるという方はブラウザバックを。それでもいい、という心の広い方のみお進みください






期末テストが終わって気が緩んでいたのか、それともエアコンを入れっぱなしで昼寝をしたのがまずかったのか。
週末から自分史上最強の夏風邪をこじらせて、二日間も学校を休んだ。
一年の頃から皆勤賞だったのにもったいないことをしたな、と思ったのは、先週の金曜以来、五日ぶりに教室に入ったときだった。

体育のプールは見学させてもらったけれど、何事もなくすべての授業を終えた放課後。
のんびり教科書をカバンに詰め込んでいたら、いつもは誰よりも先に教室を出ていくクラスメイトの海堂が私の席に近づいてきて、不機嫌さを隠すことなく言った。


「…おい、あのバカをどうにかしろ」


「あのバカ」とは、私の彼氏である桃城武のこと。
桃と海堂は、顔を合わせれば言い争いばかりしている。
その多くは部員の人たちが止めてくれてうやむやになっているようだけれど、埒があかなくなると時折、こうして私にまで飛び火してくるのだ。
桃をなだめすかしながら「いつもごめんね」なんて海堂の機嫌を取るのにも、ずいぶん慣れてきた。

桃が落ち着いてから原因を問いただすと、呆れるくらい小さなことだったり、そもそも何に怒っていたのか忘れていたりすることもあって。
今日も今日とてくだらない小競り合いなのだろうと苦笑を噛み殺しながら、「桃のこと? なに、また喧嘩でもした?」と尋ねると、海堂は鋭い瞳をぱちりと瞬かせた。


「……お前、何も聞いてねえのか?」
「え? ごめん、何のこと?」


私の逆質問に、海堂は珍しく少し言い淀んだけれど。
早く部活に向かいたいのだろう、ちらりと時計を見て、覚悟を決めたように口を開けた。
週末にあった校内ランキング戦で、桃が関東大会のレギュラーから落ちたこと。
その日以来、桃が部活に顔を出していないこと。
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