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短編集【庭球】

第61章 真紅の深淵〔財前光〕*



「…あかん、やば」


乱れた吐息に載せた光の言葉が、私の足先を震わせる。
硬い熱が突き込まれる、その間隔が短く、鋭くなった。
一緒がいい、と請うた私の声は届いただろうか。


「ええすよ、…一緒にイこか」


苦しそうに顔を歪めていた光が、ふっと柔らかく笑んだ。
自分が無意識のうちに、きゅう、と光を締めつけたのがわかった。
足の親指に歯を立てられながら「イッてええよ、変態」という言葉を聞いた。
私たちが絶頂を迎えたのは、ほぼ同時だった。




「寝るなら布団かぶってくださいよ」


ベッドの角でくしゃくしゃになっていた布団を、ふわりと引き寄せる気配。
混濁した意識の向こうから、光の声がした。


「これやから変態は」
「ひ、光のが変態でしょ…あんなとこ、舐める趣味あったなんて知らなかった…!」


行為中でない平時に平然とそう言われるとさすがに恥ずかしくて、とっさに抗議したけれど。
私の発言は「あー、はいはい、さっさと寝ときや」という光の言葉と、がばりと頭まで布団をかぶせられたことによってかき消された。

その上から「誰彼構わず舐められるわけないわ、アホか」という小さな呟きが聞こえたことは、黙っておいてあげよう。
その言葉のあと、さらに小さく「アンタのだけに決まってるやろ」と続いたことも。

──やっぱり、ちゃんと愛されているかもしれない。

その幸せな自覚とともに、私は眠りについた。


fin






◎あとがき

お読みいただき、ありがとうございました。
なんかこう、エロを書いてしまったあとってあとがき書くのが恥ずかしい…どういうプレイだこれ笑

財前はセクシーだがエロに転ばない人、と以前書いた記憶があるんですが、やっちまいました。
でも後悔はしていない。
このお話、標準語だと変態度が強すぎるので、関西弁のくだけ具合がちょうどよかったのです。
それに敬語攻めという私のフェチも大いにあり…萌えません?

裏を書くのは苦手で、理由はいろいろあるんですが。
私は何度も読み返しながら書き進めるんですが、裏って読み返しすぎると「これってエロいのか?」と感覚が麻痺してきて、文章をいじくりまわしすぎて後悔するから…というのも一つ。
なので、読後「ちゃんとエロだったよ!」という感想を持っていただけると嬉しかったりします笑

少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
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