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短編集【庭球】

第61章 真紅の深淵〔財前光〕*


「うわ、下まで垂れてるやん」


光が、足先から口を離すことなくそう言った。
足首に添えられていた指が、つう、と蜜壺からシーツまでを伝い降りる。
ぬるりとした独特の感覚、そして「俺ここ触ってへんのに」と喉の奥で笑った光の吐息がひやりと冷たくて。
ああそうだ、いつもは足ではなくてここを舐めてくれるんだった、と思い出した。


「ここより足舐められる方が気持ちええんや?」


ほんま変態っすね、と。
本気とも冗談ともどちらにも取れるトーンで光が言う。
否応なく自覚するのは、そんな言葉にさえぞくりと反応してしまう自分のいやらしさだ。


「こんなん見てたら、もう入れたなるんすけど」


ベッドに這いつくばっていた身体を起こした光は、独り言のようにぼそりと呟いて。
カットソーを手早く脱ぎ捨てて、ベルトを緩めながら私をまた組み敷いた。

解放された足先を、シーツの上でそっと滑らせてみる。
唾液で濡れているそれは、普段の何倍もの感度で布の質感を拾う。
気持ちいい、けれど少しもどかしい、そんなふうに思いながら自分で自分を追いつめているという事実が恥ずかしくて、目を閉じた。

全部がぐちゃぐちゃに混ざり合った感覚に、身体の中心がびりびりと焼けるような気がして思わず吐息を漏らした、瞬間。
何の宣告もなしに突然、光が私の中に入ってきた。
一気に最奥まで貫かれて、これまでとは比べ物にならない大きな刺激に、私はあっけなく達してしまう。


「は、あっ、んあああっ!」
「くッ……、もうイッてもうたんすか、挿れただけやのに」


えっろ、と私をなじる光だって、いつもより絶対大きいくせに。
そう思うのに、光がまた奥へ奥へと律動を始めたせいで、私の口からは湿った喘ぎしか出てこない。
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