第9章 秋は夕暮れ〔渡邊オサム〕
放課後になってLINEをしても、夜になってから電話をしても、まったく繋がらなかった。
こんなこと、初めてだ。
どれだけ忙しくても遅くなっても、必ず返事やコールバックをしてくれていたのに。
冷たい表情のオサムちゃんが、私と忍足くんのラブロマンスなんて言ったのが、頭にこびりついて離れない。
忍足くんとこそこそ話していたのが気に食わなかったのだろうと思うけれど、連絡を全部無視されるほど怒らせてしまったのだろうか。
それならそれできちんと謝らせてほしいのに、その機会も与えてくれないなんて。
そもそも付き合っていると浮かれていたのは私だけだったのかもしれない、と思った。
教え子の中学生なんて、もともと恋愛対象なんかじゃなかったのかもしれない、とも。
年の差だけはどうしようもないから考えないようにしてきたけれど、やっぱりオサムちゃんにとっては、私なんか取るに足らない存在だったのかもしれない。
LINEに今日何度目かのごめんなさいを送って、携帯の電源を切った。
彼からの連絡がない携帯なんて、ない方がましだ。
時計に目をやったら、涙で文字盤がぼやけて、見えなくなった。