第60章 秘密の花園〔幸村精市〕*
「ねえ、渚さん、は…?」
「私も…わたしも、すき」
好きという言葉で繋ぎとめておきたい、いや、縛りつけておきたいのだ。
俺から言わせるのはどうかとも思うけれど、なりふり構っていられない。
そう思うくらいに俺は彼女に惹かれているし、多少無理に言わせたものであっても、彼女の言葉は嬉しいのだ。
それだけで達してしまいそうになるくらいに。
「でも、俺の方が好き」
かすれた喘ぎ声が漏れている彼女の口を、そう言いながら塞ぐ。
舌を絡めて、がむしゃらに腰を打ちつけると、とてつもない圧迫感が襲ってきた。
「…渚さん、締めすぎッ、だよ…!」
「知らな、ッあああ!」
ほとんど同時に高みまで駆け上がった。
乱れた呼吸を隠すようにキスをしながら、いつかラテックスではなくて彼女自身が俺の精を受け止めてくれればいいのに、なんて頭の隅で思う。
「興奮してたでしょ、いつもよりすごかったね?」と問うと、彼女は行為の最中よりずっと赤くなって「もう、バカ」と俺を殴るふりをした。
それが可愛いだけだと知っていてやっているならしたたかだけれど、渚さんならそれでもいいかもしれないと思う自分もいる。
「シャワーしたらコンビニ行かない? 俺、アイス食べたくなってきたな」
渚さんは、俺と外に出かけようとしない。
近所のコンビニに行くのがせいぜいだ。
インドア派だと言うけれど、たぶんそれは嘘。
出かけて食事をしたら、たぶん会計のときに互いに気を遣ってしまう。
デートをしないのは、俺を立ててくれようとしてくれている彼女の優しさなのだと思う。
お金の話をした途端に彼女の顔が曇ったのはたぶん、そういうこと。
「…渚さん? 大丈夫?」
「大丈夫、ごめん。少しぼーっとしちゃって」
「そう? ならいいけど…シャワー先に借りていいかい?」