第60章 秘密の花園〔幸村精市〕*
精市の癖のある髪がくすぐったくて身体をよじると「逃げちゃダメ、こっち向いて」と耳元で囁かれて。
その言葉に導かれるように首を少し捻れば、今度は唇を舌が這う。
ざらざらした舌の感触に、あっという間に自分の身体が熱を帯びたのがわかった。
器用な指先が、ブラウスのボタンを滞りなく外していく。
下着の中に忍び込んだそれは、主張し始めた突起を避けるように、胸の膨らみに優しく触れた。
焦らさないでと訴える視線を投げると、精市は楽しそうに口角を上げた。
空いた手でスキニージーンズをショーツごとずり下げられる。
ゆるゆると胸を這い回る手とは違う、性急で無骨な動きに、口の端から吐息が漏れた。
「…裸エプロンってそそるな」
笑いとも真摯ともつかない口調でそう言って、チノパン越しに張り詰めた自分の熱を押しつけてくる精市を、若いなと思う。
言葉のとおりエプロンだけはつけたまま、ブラウスも下着も身につけていたものをすべて剥ぎ取られて、八歳も歳の離れた男に舐められるように視られて──自分でもわかる、裸でいるよりもずっと興奮しているのが。
それらすべてを見透かしているのだろう視線から逃げ出したくなって思わず俯くと、双丘の頂がエプロンの上からでもわかるほど勃ち上がっていて、私はもう逃げられないのだということを否応なしに突きつけられる。
精市のベルトに手を伸ばして「もう欲しいの、おねがい」と請う声は、熱くかすれていた。
何度身体を重ねても、入ってくる熱量はいつも想像よりずっと大きくて気持ちよくて、しばらく呼吸ができなくなる。
それは綺麗な顔を苦しそうに歪める精市も同じなのだろうか、そうだったらいい。
行為のとき以外見ることのないその表情に、私は自分の中心がさらに潤うのを感じた。
無機質で冷たいシンクの端を掴んだ指先に、力が入る。