第59章 スクープの向こう側〔白石蔵ノ介〕
「白石くんのゴシップなら絶対トップ張れるわ、ありがとう。むしろ他の記事が必要ないくらいや」
大丈夫、我慢できる。
泣くことなら家に帰ってからでもできるのだ。
今は、今だけは。
「めっちゃ話題になるわ、みんながどんな反応するか今から楽しみや。…あ、けど彼女さんに確認とかせんでええの? 勝手に決めて怒られたりとか…」
白石くんが小さく「ん?」と言ったのが聞こえて、私はそっと顔を上げた。
きょとんとした白石くんは、困ったように笑って「えーっと、違くて…すまん、言葉足りひんかったよな」と言った。
「俺と林サン、って意味やってんけど」
「……へ?」
「それとも俺、遠回しに振られとる、かな?」
あれ、このやりとりデジャヴや、絶対どこかで。
呆然とそんなことを思っていたら、手を取られた。
そのまま指を絡められて、これっていわゆる恋人つなぎっていうやつ?
その意味がわからないほど、私はバカじゃない。
あたたかいこの手を、断る理由もない。
「…め、滅相もございません…」
「はは、なんやこれ、デジャヴやな」
同じことを考えていたのが嬉しくて、白石くんにつられるように笑うと、彼はとんでもないことを口にした。
「手繋ぎデートもありやけど、なんなら路チュー撮られるんも絶頂やと思わへん?」
「あ、あほ!」
* *
結局、完全下校時間の直前に苦し紛れに思いついた「オサムちゃんはコケシを一日にいくつ乱発するのか」を数えて書いた記事がびっくりするくらいウケて、校長先生から調査報道賞をもらった。
それが実は私と白石くんの初めての連名記事だったということは、また別の機会にでもお話ししようと思う。
fin
◎あとがき
お読みいただき、ありがとうございました。
久しぶりの白石、いかがでしたか。
白石って女子にさりげなく優しくて、しかも自分ではその自覚があまりないくせに、女子からさりげなく優しくされるとコロッといきそう。
でもさりげなくないとダメで、わかりやすいと途端に引きそう笑
新聞部のネタはいつか書こうと思っていたので、形にできてよかったです。
「根暗で意地っ張りな夢主ちゃん」とのリクエストをくださったマッキーさま、ありがとうございました!
それにしても四天、本当にフリーダムでクレイジー…!
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。